子供の挨拶は家庭内のしつけから!強制せずに根気よく!?
日本の哲学者であり、教育者である森信三氏は、躾の三大原則として、『挨拶・返事・靴そろえ』を挙げています。この3つの躾さえを徹底すれば、大抵のことはきちんとできる、そう言われています。
今回は、その中から『挨拶』を取り上げたいと思います。
子供に対する挨拶と言って、私が思い浮かべるのは、あるママ友親子のこと。子供が幼稚園に入園する前からの、長い付き合いです。
そのママ友は、とにかく、人に対する挨拶を、徹底して教え続けてきました。
本当にいつも、「Y、挨拶は?」と促し、「お礼は言った?」と確認し、「挨拶をしないのは、どうしてだろう」と相談されたこともあります。
Yちゃんは現在、6年生になりました。Yちゃんの性格や、その親子の例をもとに、私が考える『挨拶』という躾について、考えてみたいと思います。
強制すると『出来なくなる』!?
幼少期のYちゃんは、常々ママから、挨拶を強制されて育ちました。
私たち親子が遊びに行くと「“こんにちは”は?」と促し、お土産を渡すと「“ありがとう”って言った?」と確認。Yちゃんに何か言けば、「返事は?」と、必ず言います。
Yちゃんは、とても物静かな性格の子供で、挨拶はもちろん、積極的に話をするような雰囲気もありません。
しかし、お母さんに指摘されるたびに言うことを聞き、小さな声で、挨拶や返事をしてくれました。
その頃、「いくら言っても、挨拶の声が小さいの。言わないと自分からしないし…。」と相談されたことがあります。
私は「小さな声でも、きちんとしてくれるから大丈夫!」「Yちゃん、ちゃんと言ってくれたよね!」と、言い続けて来ました。
特に物静かな子供に対しては、あまり強制したり、叱ることは、気持ちを萎縮させ、逆効果では…と、当時の私は感じていました。
ママの教えは伝わっている!
Yちゃんに対するママの躾は、幼稚園に入園、小学校に入学しても続きます。
成長しても、Yちゃんは相変わらず引っ込み思案。大きな声で挨拶をすることはありません。
そんなYちゃんが小学校1年生のとき、私が経営する珠算教室に通うようになりました。
多くの生徒たちが、教室に到着すると、大きな声で「こんにちはー!」と言って、入って来ます。ところがYちゃんの挨拶は、違います。
ひょこひょこと私のところに寄ってきて、小さな声で「こんにちは」と言うのです。帰るときも、必ず私のところまで来て、耳元で「さようなら」と言うのです。
小さな声でも、きちんと挨拶をしてくれる。それは、Yちゃんのママが、幼少期からずっと伝えてきたという経緯があってこそ、身に付いたのだと感じました。
生徒の中には、入って来るや否や「先生~!!」と、全く関係のない話を始める子もいますし、普段は声が大きく活発なのに、こちらから挨拶をしても「はぁ」「うん」としか言えない子もいます。
「挨拶をすることを、教えられて育っていないのかな。」正直、そう捉えざるを得ません。
それに比べると、小さな声でも、必ず挨拶をしてくれるYちゃんは、ママの教えがきちんと伝わっているのだなと、快く感じるのです。
少しずつ出来るようになる!
幼少期のYちゃん親子を見ていると、あまりの徹底ぶりに、正直、「そこまで言わなくても…」と感じることもありました。
「ママの前では恥ずかしさもあり、言えなくなってしまうのでは?でも、声が小さくても、きちんと言ってくれるから、大丈夫!」
そのような話をしたことがあります。
Yちゃんは、小学校3~4年生になった頃から、珠算教室に来て、私の耳元で囁くような挨拶をすることはなくなりました。
相変わらず物静かな性格ではありますが、教室の入り口から私に聞こえるように「こんにちは!」「さようなら!」と言えるようになりました。
また、ママが口うるさく言うこともなくなり、6年生になった今では、本当にしっかりと挨拶のできる子になりました。
性格も影響するのでは!?
挨拶をスムーズに躾ける方法として、多くの育児書等には、『親が手本になることが大切』だと書かれています。
しかし、いくら親がきちんと挨拶をしても、Yちゃんのように、子供がすんなり出来るとは限りません。
我が子の場合は、あまり厳しく教えなくても、誰かれ構わず「こんにちは!!」と大きな声をかけ、親が心配になるくらいでした。
そこには、子供の『性格』がとても大きく影響しており、挨拶の躾方も、一概に育児書が正しいとは言えないのではないでしょうか。
そして、たとえ、なかなか挨拶が出来ない子でも、諦めずに、根気よく教え続けることは必要であると思います。
家庭内における挨拶から!
子供は成長に伴い、家族以外の人とコミュニケーションを取ることが多くなります。そして、そこに『挨拶』を欠かすことはできません。
すぐに出来る子、出来ない子はいても、教えなくて良い道理はないのです。
しかし、家庭内でできないことが、外で出来るようになるでしょうか。
外での挨拶は長い目で見守りながら、まずは、家庭内における挨拶を、大切にしてみてはいかがでしょう。
家庭内で掛け合う「おはよう」「おやすみ」「ありがとう」等の、日常的な挨拶を続けていれば、子供は身をもって挨拶の必要性を学んでくれるはずです。
そして、家庭内での挨拶から、外での挨拶へと続き、人とのコミュニケーションへと、次第に発展させていくことができるのではないでしょうか。
子供は今、何事も学んでいる最中です。挨拶も、もちろんそのひとつ。「今すぐに出来るようになってほしい」と結果を焦ることは禁物です。
家庭の中で続けていれば、きっと出来るようになる、そう信じてみてください。
挨拶ができない特例もあります。
最後に、挨拶が出て来ない子供の中には、『しない・出来ない』のではなく、何らかの原因がある場合もある、そのお話をしておきたいと思います。
例えば…
・声をかけられても意識が別の場所に向いているために、挨拶として受け取れない。
・極端な恥ずかしがりやで、決まった人や場所でなければ声を出すことができない。
・定まった声のトーン、会釈の角度でなければ挨拶だと感じ取れない。
こういった理由が、挨拶に影響することもあります。
広汎性発達障害、ADHA、場面緘黙症など、躾とは無関係に挨拶ができないこともあります。そういった場合、強制したり叱ることは、子供を辛く苦しめてしまいます。
もし、心配だと感じた場合は、専門機関で調べてもらうと、子供の気持ちが楽になるかもしれません。
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